訪問介護には、「やっていいこと」と「やってはいけないこと」の細かい線引きがあります。外から見ると「そこまで?」と思うようなルールも多くて、現場のヘルパーはこの線引きの間で悩むことがとても多い。今回はそんなお話です。
玄関の内側はOK、外側はNG?
たとえば掃除。私が働いていた現場では、玄関のドアの内側は拭いてもいいけれど、外側は拭いてはいけない、というルールがありました。
介護保険で提供する生活援助は、あくまで「利用者さん本人の日常生活に必要な範囲」。家の外——つまり玄関の外側やベランダ、庭などは対象外とされることが多いのです。
理屈はそうなのですが、利用者さんからすれば「同じドアやのに、なんで外は駄目なんや」となりますよね。実際、私も怒られたことがあります。目の前の利用者さんに「決まりなので」と説明するのは、現場のヘルパーにとって本当につらい役回りです。
ヘルパーが「できないこと」一覧
玄関の外側だけではありません。代表的なものを挙げてみます。
1. ふだんの家事を超えること
- 大掃除、模様替え、床のワックスがけ
- 窓拭き(特に外側や、脚立を使うような高いところ。室内側の手が届く範囲だけは例外的にOKとされる場合もあります)
- 換気扇の掃除や、家具を動かしての掃除
- 庭の草むしり、ペットの散歩
- 家電の修理、パソコンやスマホの設定
「日常的に必要な家事の範囲を超える」「今すぐやらなくても生活に困らない」というのが理由です。
2. 利用者さん本人以外のためのこと
- ご家族の分の料理・洗濯・買い物
- 家族も使う場所(リビングなど)の掃除
- 来客の対応
介護保険のサービスは、あくまで「利用者さん本人のため」のものだからです。ご家族と同居されている場合は、そもそも生活援助(家事のサービス)自体が制限されやすい、ということも知っておくといいと思います。
3. 生活に必要のないものの買い物
- お酒やタバコなどの嗜好品
- お歳暮・お中元などの贈り物
介護保険は税金と保険料で運営されているので、「なくても生活に困らないもの」は対象外、という考え方です。
4. 医療行為
医師や看護師にしかできない医療的なケアは、ヘルパーはできません(たんの吸引など、特別な研修を受ければできるものも一部あります)。
※どこまでOKかは、自治体や事業所、その方のケアプランによって違うことがあります。ここに挙げたのはあくまで一般的な線引きです。
線引きは、昔と今で変わることもある
この線引き、実はずっと同じではありません。私が働いてきた間にも、変わったものがあります。
代表的なのは、たんの吸引です。昔は「医療行為だからヘルパーは絶対にできない」ものでしたが、制度が変わって、今は特別な研修を受けて登録したヘルパーなら、たんの吸引や経管栄養(チューブでの栄養補給)ができるようになっています。
だからこの記事の一覧も、「今はこう」という話です。これから訪問介護を使う方・働く方は、最新のところはケアマネさんや事業所に確認してくださいね。
お菓子ひとつでも「もらったらダメ」
もうひとつ、利用者さんから物をもらってはいけないというルールもあります。これは介護保険の決まりというより、事業所の職業上のルールです。
「ありがとう」の気持ちでお菓子を差し出してくださる利用者さんに、「お気持ちだけで」とお断りする。冷たく感じるかもしれませんが、ちゃんと理由があります。受け取ってしまうと、特定の利用者さんへのえこひいきに見えたり、「渡したから多めにやってくれるはず」という期待が生まれたり、あとでトラブルになったときに疑われるもとになったりするからです。
なぜこんなに細かいのか
根っこにあるのは、「ヘルパーはお手伝いさんではなく、自立を支えるための公的サービス」という考え方です。
ただ、理屈はそうでも、長年その家で暮らしてきた方にとって「ここからは介護保険の対象外」なんて線引きは、生活実感に合わないのが当たり前。ルールはルール。でも目の前にいるのは、理屈ではなく生活している人。この間で揺れるのが訪問介護の難しさです。
ヘルパーを守ってくれるのは、ケアマネの「ひとこと」
ここで大事になるのがケアマネジャー(ケアマネ)さんの存在です。
サービスが始まる前に、ケアマネさんが利用者さんやご家族に「ヘルパーができるのはここまでです」としっかり説明しておいてくれるかどうか。これで現場の空気がまったく変わります。
- 説明が足りないと…現場でヘルパーが「駄目なんです」と言う係になり、利用者さんとの関係がぎくしゃくする
- しっかり説明してくれていると…利用者さんも納得済みなので、ヘルパーは気持ちよく仕事に集中できる
私の経験でも、すごくちゃんと伝えてくれるケアマネさんに当たると、本当にありがたかった。逆に、そこが曖昧なままだと、ヘルパーが困る場面が何度もありました。
これから訪問介護を始める方は、困ったら一人で抱えず、サービス提供責任者やケアマネさんに相談すること。線引きの説明はヘルパー一人の仕事ではありません。それを知っているだけで、ずいぶん気持ちが楽になりますよ。

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